リユース! ジャパン プロジェクト

Interview

今持っているモノは本当に必要?
実体験を映画化。「365日のシンプルライフ」の監督にインタビュー

インタビューメインビジュアル

家の中にあふれるさまざまなモノ。それらは本当に必要か、モノとの付き合い方を考えるきっかけともなる映画が「365日のシンプルライフ」。

ヘルシンキに暮らす26歳のペトリは、失恋の痛手をモノで埋めようとしていた生活をリセットするため、ある“実験”を決意。ルールは、持っているモノをすべて倉庫に預ける、倉庫から持ち出すのは1日に1個、1年続ける、1年間何も買わない、の4つ。

この実験ドキュメンタリー映画で、監督・脚本・主演を務めたペトリ・ルーッカイネン氏に、お話を伺いました。
リユースを実践する上で通過点となる自分とモノとの関係や今の生活を見直し、シンプルに生きるためのヒントが得られるかもしれません。

“実験”を思いついたきっかけ

簡単に言うと、モノが多すぎたということ。人生を豊かにしたいと思って増えていったモノが、最終的にはあまりにも多すぎて自分を苦しめるような感じになり、自分は幸せではないと気付き出したというのがそもそもの発端です。家から1kmほどのところに貸し倉庫があるということを知っていたので、「そうだ、あそこに荷物を全部預けたらどうだろう」ということを思いついたんです。自分にとってだいじなモノを選ぶことができなかったので、とりあえずいったん全部預けて、そこから少しずつ戻してこようというアイデアになったわけです。
ペトリ・ルーッカイネン

自分が持っていたモノへの気持ちの変化

最初は1年、365日を終えたときに、自分が選んだ365個のモノは自分にとってもっともだいじなモノで、それらが幸せをもたらしてくれるだろうと思っていました。1年が終わってうれしい再会があると思っていたのですが、実際は「こういうモノがあったんだ」というくらいで、1年間、自分の目の触れるところになかったことによって、持っていたモノに少しずつ愛着というか関心が薄れていき、自分の人生に関係のないモノたちになっていきました。

「買うこと、使うこと、捨てること」の変化

この“実験”の後、何カ月も買い物ができませんでした。モノを買うという気持ちや衝動が起こらず、買うという行動そのものをもう一度学ばなければならなかったような状態でした。
モノを買うということは、所有することにつながりいずれは捨てなければならない。そのサイクルで自分にどういう責任があるのかを今は感じていてほとんど買いません。
最近はサステナビリティ(持続可能性)の考え方が浸透していることもあり、友人とも、新しく何かを買う話よりも、誰かそれを譲ってくれないだろうかとか、新しいモノを買うとそれだけ資源を無駄にするのではないかとか、そういう話をします。
映画「365日のシンプルライフ」より

モノを買わないルール。壊れたら直す。

人との「つながり」の変化

今思えば、実験中は自分の人生の中でもっとも社交的な1年だったと思います。
テレビだったり、パソコンだったり、そういうものがあればあるほど、それを使うがために家の中にこもってしまいがちですが、自分の家には何もなかったので、家にいるよりは友人に会いに外に出るとか、カフェに行くとか、そういうかたちで友人たちとの関係が深まった1年でした。
しばらくは目ざまし時計も携帯電話もなかったので、仕事に行くために毎朝弟が起こしに来てくれました。彼は本当によくこの“実験”に付き合ってくれたと思います。モノがない分、周りの人に頼らなければならなく、迷惑をかけたのですが、その分絆が深まりました。母たちも温かく見守っていてくれたように思います。
映画「365日のシンプルライフ」より

食べ物を届けてくれる弟。窓の外を天然冷蔵庫に。

モノを減らしたことで見えたもの

なんで自分が実験前にモノに執着していたのか、なぜモノが幸せをもたらしてくれると思っていたのか、そういう自分が今ではうそのように思います。
モノと距離がほしいと思ったことは、最終的には自分にとっての居場所や、家とは何かを考えることであったのではないかと思います。それまで家というのはモノがあった上での家で、好きなインテリアや好きなモノに囲まれることではじめて家という気持ちでした。“実験”により自分自身を知り、ありのまま受け入れられるようになったことで、そうした物質的な家ではなく、内なる心の家、自分が安心していられる場所であることに気づかされました。

日本の調査では、家の中には不用なモノが20%あるとのことですが、実際は低く見積もっても50%はあるんじゃないかと思っています。
実験が終わったあとの話をすると、倉庫には何カ月も行きませんでした。最終的には2回くらい行き、子供の頃の思い出の写真や一部の実用品を取ってきて、それ以外のモノは人にあげたり、リサイクルセンターに持って行ったりしました。
ペトリ・ルーッカイネン

モノと向き合う方法

僕と同じ“実験”をするのは大変だと思いますので、まずモノを買わないことだと思います(笑)。
たとえば、2、3年の間に1回も手を付けていないモノが誰の家にも結構あると思います。それらを集めて、これから2年の間にいつ、どこで、どういうふうに使う予定があるかを考え、ないのなら、それらは全部手離すというようにやるといいと思います。
また、週末にまとめていっきにやろうというのはやめたほうがいいと思います。そうすると、焦って急いで決断して、あとで悔やむということにもなります。2カ月ぐらいとか、できれば1年くらい、じっくり時間をかけてひとつひとつよく考え整理するといいと思います。
あとは、フィンランドで今行われている動きなのですが、1日に何かひとつを手離す、1週間にひとつ手離すというようなルールを自分で作り1年続けていくような、ゆとりをもってやると続くのではないかと思います。

これから映画をご覧になる方へ

おそらく、実際にこの“実験”を経験した者よりも、はるかに楽しく受け止めてもらえるのではないかと思います(笑)。みなさんに代わって僕が体験していると軽い気持ちでご覧いただき、ご自身にあったかたちでモノと向き合って、これから先何をしていくのかを決めていただければと思います。
ペトリ・ルーッカイネン
ペトリ・ルーッカイネン
1984年生まれ。17歳からテレビCMやミュージック・ビデオを作り始める。
フィンランドの国営放送Yle放映の3本のドキュメンタリー・シリーズに、ディレクター・撮影監督・編集として携わっている。
「365日のシンプルライフ」では、監督・脚本・主演を担当する。